2023.09.04GOALZ
私が訪問看護の理学療法士としてMさまの担当になったのは約6年前です。
当時Mさまは、六甲アイランド内にあるレストランに、ご友人と頻繁にランチに行かれており、「それが唯一の楽しみ」と嬉しそうにおっしゃっておられた姿を思い出します。しかし、3年ほど前にそのご友人が遠方に引っ越してしまったことから、その唯一の楽しみがなくなってしまわれたのです。
また昔みたいにランチに行きたい……
GOALZのチラシを持参した際、Mさまはすぐにそうおっしゃいました。「何にも楽しいことがないわ」というのが口癖のようになっていましたが、この企画が動き出してからは「ちょっと心配だけど楽しみ」と、不安と期待が入り混じった様子でした。
またMさまから、もう一つのご希望を聞いていました。それは“車の助手席に座りたい”ということ。Mさまは通所リハビリに通う際、車椅子に座ったまま乗車するので外の景色があまり見えないことを残念に思われていたのです。私自身はじめてそのことに気づかされたと同時に、ぜひ助手席に座っていただきたいと思いました。日常生活で車椅子を使用しているMさまにとって、助手席に座ることはかなり久し振りになります。そのため、当日使用する車を使って実際に練習し、本番に臨む準備をしていきました。
GOALZ当日は、曇り空ながらも明るく、気温も過度に高くなくちょうど良い天気でした。心配していた車の乗り降りも、事前に練習していた甲斐もあり安全に問題なく行えました。レストランへの道中では「わあ、すごい。懐かしい」と夢中になって助手席の窓から景色を眺めておられ、その様子をみて私自身も嬉しくなりました。お仕事で通われていた道やよく訪れた店、ゴルフの打ちっ放し場、息子さまが小さかった頃の思い出の場所などを見つけ、当時のエピソードを教えていただきました。
レストランのあるホテルに到着すると、エレベーターで18階へ。
エレベーターを出ると六甲アイランド内から大阪湾まで一望できる景色に、思わず二人で「すごーい!」と声を上げました。そしてレストランに入ると、スタッフの方が椅子を動かして車椅子でテーブルにつけるように気を遣ってくれましたが、Mさまはここでも「椅子に座りたい」と車椅子から立ち上がり、レストランの椅子に座りました。 普段は少し怖がりで自信無さ気なことも多いMさまですが、そのような素振りはまったく見せませんでした。
帰りの車内でも景色を眺めながら「あっという間だった。本当によかった」とおっしゃっていただき、心からこの企画を実施できてよかったと感じました。また助手席への乗り降りが問題なくできたことは、長年のリハビリテーションの成果だとも言えますし、Mさまの自信にも繋がったように感じます。このGOALZをきっかけに今後のリハビリテーションにも意欲が湧き、次の「やりたいこと」を見つけていただけることが私の願いです。